ソフトウェアやITシステムに関わる仕事には、「開発」「運用」「保守」という3つの主要なフェーズがあります。これらはそれぞれ独立しているようで密接に関連し、システムのライフサイクル全体を支えています。では、具体的にどのような業務が含まれるのでしょうか？
この記事では、各フェーズの役割と違いをわかりやすく解説し、実際の業務内容や必要なスキルについても紹介します。IT業界でのキャリアを考えている方や、自社システムの管理を効率化したい企業担当者の方にも役立つ情報をまとめました。
1. ソフトウェア・システムの「開発」とは？
「開発」は、新しいソフトウェアやシステムをゼロから作り上げるプロセスです。要件定義、設計、コーディング、テストまで、一連の工程を経て完成させます。
開発の主な業務内容
- 要件定義：クライアントやユーザーのニーズをヒアリングし、システムの仕様を決定
- 設計：機能設計（何を作るか）と技術設計（どう作るか）を策定
- コーディング：プログラミング言語（Java, Python, C#など）を使って実装
- テスト：単体テスト、結合テスト、ユーザー受け入れテスト（UAT）で品質を確認
開発には、アジャイル開発やウォーターフォールモデルなど、さまざまな手法があります。近年ではDevOpsの導入により、開発と運用の連携が強化されています。
開発に必要なスキル
- プログラミングスキル（言語に応じて）
- システム設計能力
- 問題解決力
- コミュニケーション能力（チームやクライアントとの調整）
開発者は「ものづくり」に携わるため、創造性と技術力の両方が求められます。
2. ソフトウェア・システムの「運用」とは？
「運用」は、完成したシステムを安定して動かすための業務です。障害対応やパフォーマンス監視、バックアップ管理などが含まれます。
運用の主な業務内容
- 監視：サーバーやネットワークの状態をリアルタイムでチェック
- 障害対応：トラブル発生時に迅速に復旧作業を行う
- バックアップ管理：データ消失に備えて定期的にバックアップを取得
- ログ分析：システムの利用状況やエラーを解析し、改善に活かす
運用業務は24時間365日体制で行われることも多く、SRE（Site Reliability Engineering）のような高度な自動化手法が注目されています。
運用に必要なスキル
- インフラ知識（サーバー、ネットワーク、クラウド）
- トラブルシューティング能力
- 自動化ツール（Ansible, Terraformなど）の活用スキル
- 冷静な判断力（緊急時対応）
運用エンジニアは「システムの守り手」として、安定性とセキュリティを維持する役割を担います。
3. ソフトウェア・システムの「保守」とは？
「保守」は、システムの長期的なメンテナンスを行う業務です。バグ修正、セキュリティパッチ適用、機能追加などが該当します。
保守の主な業務内容
- バグ修正：ユーザーからの報告を受けて不具合を修正
- バージョンアップ：OSやミドルウェアの更新
- セキュリティ対策：脆弱性を修正し、サイバー攻撃を防ぐ
- 機能改善：ユーザーの要望に応じて小規模な改修を実施
保守業務は「開発」と「運用」の中間に位置し、ITIL（ITサービスマネジメントのフレームワーク）のベストプラクティスが参考にされることがあります。
保守に必要なスキル
- 既存コードの理解力
- 細かい修正作業への忍耐力
- セキュリティ知識（CVE、脆弱性管理）
- 顧客対応スキル（ユーザーサポート）
保守エンジニアは「システムの寿命を延ばす」役割を果たし、長期的な信頼性を確保します。
「開発」「運用」「保守」の違いを比較
| 項目 | 開発 | 運用 | 保守 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 新規システムの構築 | システムの安定稼働 | システムの維持・改善 |
| 期間 | プロジェクトベース | 継続的 | 継続的 |
| 主な業務 | 設計・コーディング・テスト | 監視・障害対応 | バグ修正・セキュリティ更新 |
| 必要なスキル | プログラミング・設計力 | インフラ知識・自動化スキル | コード修正・顧客対応力 |
まとめ：3つのフェーズを理解し、キャリアや業務改善に活かそう
「開発」「運用」「保守」は、それぞれ異なる役割を持ちながら、システムのライフサイクル全体を支えています。
- 開発者志望の方 → 新しい技術を学び、創造的な仕事に挑戦
- 運用エンジニア志望の方 → 安定性と効率化を追求するスキルを磨く
- 保守エンジニア志望の方 → 細かい修正と顧客サポートで信頼を築く
また、企業側としては、これらの業務を適切に分担・連携させることで、システムの品質とコスト効率を最適化できます。
今後のIT業界では、DevOpsやSREのような「開発と運用の融合」がさらに進むと予想されます。自身のキャリアや組織の体制を見直す際に、この3つのフェーズを意識してみてください。
▼ さらに深く学びたい方におすすめの記事
この記事が、ソフトウェア・システムのライフサイクルを理解する一助となれば幸いです。
