DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速とIT人材不足が深刻化する中、ローコード開発ツールの需要が急激に高まっています。プログラミング知識が少ないビジネスユーザーでもアプリケーション開発が可能になるこれらのツールは、開発期間の短縮とコスト削減を実現する強力なソリューションです。本記事では、2025年現在の主要なローコード開発ツール18種を徹底比較し、各ツールの特徴、強み、適したユースケースを詳しく解説します。
目次
Toggleローコード開発とは?ノーコードとの違い
ローコード開発とは、従来のプログラミングに比べてコード記述量を大幅に削減し、視覚的な操作(GUI)を中心にアプリケーションを開発する手法です。ドラッグ&ドロップでUIを設計し、最小限のコーディングでビジネスロジックを実装できるため、非エンジニアでも比較的容易に開発に参加できます。
ノーコードツールとの主な違いは以下の通りです:
比較項目 | ローコード | ノーコード |
---|---|---|
コーディング量 | 最小限必要 | 原則不要 |
カスタマイズ性 | 高い | 制限あり |
開発対象 | 業務システム、基幹システムなど | 簡易アプリ、LP、フォームなど |
対象ユーザー | エンジニア・ビジネスユーザー | 非エンジニア中心 |
ローコードツールは「効率性」と「柔軟性」のバランスが取れており、中規模~大規模な業務システム開発に特に適しています。
ローコード開発ツールを選ぶ5つのポイント
- 開発対象と規模:Webアプリ、モバイルアプリ、業務システムなど、開発したい対象によって最適なツールは異なります。
- カスタマイズ性:API連携や独自ロジックの実装が必要かどうかを確認しましょう。
- 学習コスト:ツールの操作性や日本語サポートの有無は重要な判断基準です。
- コスト体系:ユーザー数や機能制限、追加オプションの有無を比較検討しましょう。
- セキュリティ基準:SOC2やISO27001などの認証取得状況は企業導入時の重要な判断材料です。
2025年おすすめローコード開発ツール18選
1. OutSystems
エンタープライズ向けの高機能プラットフォームで、複雑な基幹システムの開発にも対応可能。AIによるコード生成機能や単一コードベースでのマルチプラットフォーム開発が特徴です。料金は年間$36,300~で、大企業向けの本格的なソリューションを探している場合に最適です。
2. Mendix
OutSystemsと並ぶエンタープライズ向けツールで、Web・モバイル両方の開発に強みがあります。AIサービスやカスタムMLモデルを活用したスマートアプリ開発が可能。無料プランも用意されているので、まずは試してみたい企業にもおすすめです。
3. Microsoft Power Apps
Microsoft 365とシームレスに連携できる業務アプリ開発ツール。1,200以上のコネクタで外部システムとの連携も容易で、Officeツールを日常的に使っている企業との親和性が高いです。AIがアプリ設計を支援する機能も注目されています。
4. プリザンター
国内発のOSS(オープンソースソフトウェア)で、無料で利用可能なのが最大の特徴。Webデータベース型の業務アプリを素早く作成でき、スクリプトによる機能拡張も可能です。りそな銀行やユニ・チャームなど大手企業の導入実績もあります。
5. Claris FileMaker
Appleの子会社が提供するローコードプラットフォームで、Mac/Win/iOS/Webとマルチプラットフォーム対応。オフライン環境でも動作するのが特徴で、Fortune100企業の7割以上に導入されている実績があります。
6. kintone(キントーン)
サイボウズが提供する国内シェアの高いローコードツール。直感的な操作で業務アプリを作成でき、30,000社以上の導入実績があります。月額780円~の手頃な価格帯も魅力です。
7. intra-mart
NTTデータグループが提供する大規模システム向けプラットフォーム。Excel感覚で操作できるスプレッドシート機能や、業務プロセスの自動化に強みがあります。10,000社以上の導入実績があり、特に大企業での採用が目立ちます。
8. AppSheet
Googleが提供するスプレッドシート連携型のローコードツール。在庫管理や日報アプリ、申請フローなど、データ集計を伴う業務アプリの開発に最適です。Google Workspaceとの連携がスムーズな点も評価されています。
9. Salesforce Lightning
CRM連携に特化したローコード開発環境。Salesforceのデータを活用した業務アプリを迅速に構築でき、AI搭載アプリの開発も可能です。月額3,000円~と比較的手頃な価格帯から利用できます。
10. WebPerformer
キヤノンITソリューションズが提供する日本製ツール。データグリッドやグラフ表示、チャットボットなど多彩な機能を盛り込め、PC・スマートフォン最適化されたWebアプリを自動生成できます。
11. Magic xpa Application Platform
45,000社以上の導入実績を持つ老舗のローコードツール。OSのバージョンアップにも強く、長期的な利用を見据えたシステム構築が可能です。バッチ処理や帳票設計など、日本の業務システムに求められる機能が充実しています。
12. Wagby
3ステップでアプリケーションを作成できる簡易性が特徴。データは暗号化されて格納されるため、セキュリティ要件の高い業務にも適しています。習得しやすいビジュアルプログラミング環境を提供しています。
13. Bubble
Webアプリ開発に特化したノーコード/ローコードツール。デザイン、データ、ロジックの全てを単一プラットフォームで提供するフルスタックソリューションです。AIによるアプリ雛形生成機能や数千のプラグインによる拡張性が高く評価されています。
14. Retool
データベースやAPIと直接接続可能なローコードプラットフォーム。内製の業務アプリケーション構築に特化しており、開発スピードが非常に速いのが特徴です。サンフランシスコ発のツールで、世界中に8,000以上の顧客を抱えています。
15. FlutterFlow
モバイルアプリ開発に特化したローコードツール。FlutterベースでiOS/Android両対応のネイティブアプリを開発でき、UIの自由度が高いです。無料プランも用意されているので、個人開発者にもおすすめです。
16. AppSuite
ネオジャパンが提供する業務アプリ開発プラットフォーム。案件管理や在庫管理など豊富なテンプレートが用意されており、短期間でのアプリ開発が可能です。月額600円~と低コストで利用開始できます。
17. QuickBase
直感的なドラッグ&ドロップインターフェースが特徴のローコードツール。テンプレートを活用すれば、ゼロから開発する必要がなく開発効率が向上します。業務プロセス管理やデータ可視化に強みがあります。
18. JUST.DB
あらゆる業種の業務システムをプログラミング知識なしで構築可能なクラウドデータベース。組織のDX化を支援する豊富な機能を備えており、ITトレンドでの資料請求ランキングで1位を獲得した実績があります。
ローコードツール導入のメリット・デメリット
メリット
- 開発スピードの向上:従来の1/3~1/10の期間で開発可能
- コスト削減:外注費用や人件費を大幅に削減
- 内製化促進:現場のニーズを直接反映した開発が可能
- IT人材不足の解消:非エンジニアでも開発に参加可能
デメリット
- プラットフォーム依存:ツールの仕様変更やサービス終了のリスク
- カスタマイズ制限:複雑な処理にはコード記述が必要な場合も
- 学習コスト:ツール独自の操作方法を習得する必要あり
業種別おすすめツールと成功事例
- 製造業:プリザンターやMagic xpa(検査記録アプリ開発で入力ミス80%削減)
- 医療機関:AppSheet(勤怠管理アプリで複雑なシフト管理を一元化)
- 小売業:kintone(発注管理ツールでExcelからの脱却)
- 金融機関:Claris FileMaker(高いセキュリティ基準を満たすSOC2認証取得)
- 教育機関:OutSystems(授業アンケートアプリを2週間で導入)
ローコード開発の今後と市場動向
世界のローコードプラットフォーム市場は、2023年時点で約300億ドル、2027年には約650億ドルに達すると予測されています。日本でもDX推進の動きとともに導入企業が増加しており、特に以下の分野での成長が期待されています:
- ローコード+生成AI:AIによるコード生成支援の高度化
- ローコード+IoT:IoTデバイスとの連携強化
- シチズンデベロッパー:非IT部門の社員開発者の育成加速
まとめ:自社に最適なローコードツールの選び方
ローコード開発ツールは、各社の特徴や強みが大きく異なります。自社の開発対象や予算、チームのスキルレベルに合わせて最適なツールを選択することが重要です。まずは無料プランやデモ版を試して、操作性や機能を実際に確認することをおすすめします。
「小さく始めて大きく育てる」がローコード導入の成功の秘訣です。MVP(Minimum Viable Product)から始め、現場のフィードバックを反映させながら改善を重ねていくアプローチが有効です。適切なツールを選択し、効果的な活用方法を模索することで、DX推進と業務効率化を加速させましょう。